一部の社員が個人でChatGPTやGeminiを使い始めていて、生成AIの社内研修を考えている会社に向けた記事です。会社としてAIの使い方をまだ決めていない、従業員20〜100名ほどの会社が前提です。以前に操作の説明会を開いたのにAIが使われなかった会社も、何を研修すればよいか分からない会社も対象です。生成AIの社内研修は、操作の説明より先に部署ごとにAIに任せる業務を1つ決め、その業務で練習する場にすれば、研修のあともAIが使われ続けます。
この記事では、研修の前に決める3つのことと、つまずきやすい点、自社で進めるか外に頼むかの境目を説明します。最後に、部署の責任者に1つ聞くだけで済む、今日できる確認を示します。
| 要点 | 内容 |
|---|---|
| この記事の対象 | 従業員20〜100名ほどで、会社としてAIの使い方をまだ決めておらず、一部の社員が個人でChatGPTやGeminiを使っている会社。生成AIの社内研修を考えている経営者や、総務・人事の担当者 |
| 対象外 | AIの開発やプログラミングを学びたい会社、研修の助成金の申請方法を知りたい会社、部署ごとのAIの使い方がすでに決まっている会社 |
| 結論 | 生成AIの社内研修は、操作の説明から始めません。研修の前に部署ごとにAIに任せる業務を1つ決め、研修をその業務で実際に練習する場にすれば、研修のあともAIが使われ続けます |
生成AIの社内研修が、操作の説明会で終わると起きること

操作の説明だけの社内研修では、翌日に自分の業務の何に使えばよいかが分からず、生成AIは一部の社員しか使わないままになります。生成AIとは、指示した内容に応じて、文章の下書きや要約などを作るAIです。ChatGPTやGeminiがその例です。
研修には、画面の使い方や指示文の書き方を教える「操作の研修」と、自分の部署の業務にAIを使う手順を決めて練習する「業務の研修」があります。操作の研修だけでは、聞いた内容と自分の仕事がつながりません。
たとえば、40名の会社で全員を会議室に集め、2時間の説明会を開いたとします。講師が見せる例は旅行の計画や記事の要約で、社員は便利そうだと感じて席に戻ります。ところが翌日、見積の送り状や日報を前にしても、AIに何を頼めばよいかが浮かびません。1か月後には、もともと詳しかった数人だけが使っている状態に戻ります。
総務省の令和8年版 情報通信白書も、どの業務にも使える生成AIの道具を入れるだけでは、一部の積極的な社員の活用にとどまる可能性があると書いています。同じ白書の企業向けの調査では、生成AIによる業務の見直しに「組織的な取組はない」と答えた日本の企業は27.0%でした。米国・ドイツ・中国より目立って高く、中小企業で特に高い傾向があります。
個人向けの調査でも、テキストを作る生成AIを使っていない人が挙げた理由は、「自分の生活や業務に必要ない」が42.4%、「使い方がわからない」が38.8%でした。使い方が決まらないまま社員が個人のアカウントで使い続けると、入れてよい情報の線引きも、社員一人ひとりの判断に任されます。
生成AIの社内研修の前に決める3つのこと

研修の前に決めるのは、部署ごとにAIに任せる業務、使う道具とアカウント、研修の形と、結果を持ち寄る日の3つです。
| 決めること | 目安 |
|---|---|
| 部署ごとにAIに任せる業務 | 1部署に1つ。毎週同じ形で作っている文書から選ぶ |
| 使う道具とアカウント、入れてはいけない情報 | 会社で用意したアカウントだけを使う。入れてはいけない情報を種類で書き出す |
| 研修の形と、結果を持ち寄る日 | 部署ごとに1時間ほど。持ち寄る日は研修の1か月後 |
1つ目の業務は、営業なら見積の送り状の下書き、総務なら社内のお知らせ、現場なら日報の整理のように、毎週同じ形で作る文書から選びます。白書の企業向けの調査でも、日本の企業が生成AIを使っている業務は「議事録・メール作成補助」が約7割で最も多くなっています。この業務で効果を実感している割合も約7割と、ほかの業務より目立って高くなっています。
業務を決めるのは、部署の責任者と経営者です。白書は、中小企業では経営幹部から各部署に実施事項や達成目標を示す形が最も多く、経営者が上から関わることが要になっているとみています。白書には、ある食品メーカーのグループが、効果が見込める業務を部門ごとに選んでから、社内に少しずつ広げた例も紹介されています。大企業の取組ですが、部署ごとに業務を先に決める考え方は、御社の規模でも取り入れられます。
2つ目の道具とアカウントは、会社で用意し、個人の無料のアカウントは業務に使いません。個人のGoogleアカウントのGeminiアプリでは、Googleが委託する人を含むレビュアー(会話を確認する担当者)が、集めた会話の一部を見ることがあります。Googleは、見られたくない機密情報は入力しないよう案内しています。個人向けのChatGPTも、既定では入力した内容が学習に使われることがあり、止めるかどうかは社員一人ひとりの設定に任されます。
大事なのは製品名ではなく、会社が契約していて、入力した内容の扱いがその契約で決まるアカウントで使うことです。
Googleの説明では、会社で契約するGoogle Workspaceに入力した内容は、人に確認されず、許可なく会社の外でAIの学習に使われることもありません。Google Workspaceなら、Business Starter(1ユーザーあたり月額800円・税抜・年契約)からGeminiアプリが含まれます。法人向けのChatGPT Businessなども、既定で入力が学習に使われません。扱いの詳しい説明は、Google「Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ」とOpenAI「企業のプライバシー」にあります。
入れてはいけない情報は、お客様の個人情報、取引先から預かった資料のように、種類で書き出します。白書も、情報漏えいの対策をした環境を社内に用意し、使い方の決まりを整えて周知すれば、安全に使えるとしています。決まりの文面は、日本ディープラーニング協会「生成AIの利用ガイドライン」のひな形を自社に合わせて直せば、一から作る必要はありません。
3つ目の研修は、全員を集めた1回ではなく、部署ごとに1時間ほどで行います。結果を持ち寄る日も、研修の1か月後に決めておきます。この時間と期間は調査で決まったものではなく、弊社の勧めです。部署ごとに分けると、その部署の業務だけで練習でき、1時間なら業務を止めずに済みます。
持ち寄る日には、部署ごとに、決めた文書をAIで作ってうまくいった点と困った点を1つずつ出し合います。この場は、白書が先進企業の取組として挙げる、使い方の例を集めて広げることや、定期的にワークショップを開くことに近いものです。
関連記事:Google Meetの議事録を自動で作る、Geminiのメモで決める2つのこと
生成AIの社内研修でつまずきやすい3つの点
つまずくのは、業務を決めずに研修を始めること、道具とアカウントを決めないこと、研修のあとの質問が1人に集まることの3つです。
1つ目は、研修の前に業務を決めていないため、当日に「何に使えばいいか」を考えるだけで研修が終わることです。部署の責任者がその場で業務を考え始めると、練習に入る前に研修の時間が尽きます。業務を事前に決めておけば、研修の時間を最初から、決めた文書をAIで作ることに使えます。
2つ目は、会社として使う道具とアカウントが決まっていないため、研修のあとに社員が個人のアカウントで使ってしまうことです。研修で使い方を覚えた社員ほど、手元の個人のアカウントで業務の文書を作ってみます。個人のGeminiアプリでは、レビュアーが確認したチャットは、履歴を消しても、アカウントから切り離された状態で最長3年保存されます。すでに個人のアカウントで使っている社員がいても責めず、研修の前に会社のアカウントへ切り替え、入れてはいけない情報を決めて伝えます。
3つ目は、研修で教えた人が、そのあとの質問を1人で受ける形になることです。AIに詳しい社員が講師を務めると、研修のあとも各部署から質問が届き、その人の本来の仕事が進まなくなります。部署ごとに最初に聞く相手を1人決め、答えられない質問は持ち寄る日にまとめると、負担が分かれます。
生成AIの社内研修を自社で進めるか、頼むかの境目

自社で進められるのは、AIを使いこなしている社員が社内にいて、その人が部署の責任者と一緒に業務を決められる場合です。その社員が研修も受け持ち、質問の窓口を部署ごとに分ければ、1人に負担を集めずに回せます。
次のどれかに当てはまるときは、頼んだほうが確実です。
- 社内に、生成AIの使い方を教えられる人がいない
- 部署が多く、部署ごとの業務を決める話し合いを回しきれない
- 会社で使うAIの道具とアカウントから決めたい
道具とアカウントが決まっていない場合は、研修の内容より先にそこを固めます。どの道具を選ぶかで、入れてよい情報の決まりも変わるためです。
弊社は、部署ごとの業務の洗い出し、入れてはいけない情報を含む使い方の決まりづくり、部署ごとの研修まで引き受けます。会社で使う道具がまだ決まっていない場合は、道具とアカウントの選び方からご相談いただけます。弊社が扱う法人向けAIチャット「HBM Assistant」の導入も、その選択肢の1つです。
「研修をしても、そのあと誰も使っていない」「何の業務にAIを使えばよいか、社員が分からない」「社員が個人のAIに何を入れているか心配」といったご相談を、弊社で受け付けています。社内でのAIの使い方を決めるセミナーと、法人向けAIチャット「HBM Assistant」の導入は、弊社にご相談いただけます。
今日できる確認は、部署ごとに毎週同じ形で作る文書を聞くこと

今日できる確認は、部署の責任者に「毎週同じ形で作っている文書を1つ挙げてください」と聞くことです。1部署あたり5分ほどで済みます。
| 確認の結果 | 次の一手 |
|---|---|
| すぐに挙がった | その文書を作ることが、研修で練習する業務の候補です。部署ごとの候補を並べ、使う道具とアカウントを決めます |
| 挙がらない部署がある | その部署は、研修の前に業務の洗い出しが要ります |
| 洗い出しや研修の組み立てを、社内で進められない | 部署ごとの業務の洗い出しからご相談ください。弊社が引き受けます |
生成AIの社内研修は、操作の説明から始めず、研修の前に部署ごとにAIに任せる業務を1つ決めておきます。研修をその業務で実際に練習する場にすれば、研修のあともAIが使われ続けます。責任者が挙げた文書を作ることが、AIに任せる最初の業務になります。
よくある質問
生成AIの社内研修は、全員を集めて1回で済ませてもよいですか?
業務の研修にするなら、部署ごとに分けることを勧めます。全員を集めると、例が特定の部署に偏るか、どの部署にも当てはまらない一般論になります。部署ごとの1時間なら、その部署の文書だけで練習できます。
生成AIの社内研修で、社員の個人の無料アカウントを使ってもよいですか?
業務の文書で練習するなら、勧めません。個人のアカウントでは、入力した内容が人に見られたり学習に使われたりする場合があり、その扱いが社員一人ひとりの設定に任されます。研修の前に、会社で用意するアカウントを決めておきます。
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弊社はGoogle Workspaceの導入支援・保守サポートを行っており、中小企業のAI活用をご相談いただいてきました。御社の業務に合わせてご提案します。
強引な営業は一切いたしません。まずはお気軽にご連絡ください。
※オンライン相談にも対応しております。
出典
- 総務省 令和8年版 情報通信白書「AI導入・活用による効果創出のステップ」
- 総務省 令和8年版 情報通信白書「組織的な取組状況」
- 総務省 令和8年版 情報通信白書「生成AIの業務利用状況」
- 総務省 令和8年版 情報通信白書「生成AIサービスを利用しない理由」
- Google Gemini アプリのプライバシー ハブ
- Google Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ
- Google Google Workspace 料金プラン
- OpenAI モデルのパフォーマンスを向上させるためのデータの使用方法
- OpenAI 企業のプライバシー
- 日本ディープラーニング協会 生成AIの利用ガイドライン
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